2022年1月号:Airdaさんの知床引っ越し物語

東京出身Airdaさんの見る知床暮らしのリアル
オホーツクハウス 2022.01.12
誰でも

こんにちは!オホーツクハウスを運営する、株式会社トーチのさのです。

これは流氷砕氷船「おーろら」に飛んでくる、写りたがりのカモメです

これは流氷砕氷船「おーろら」に飛んでくる、写りたがりのカモメです

今年の冬は雪が多いですね。北海道内ではすごく雪が積もるほうでもないオホーツクでも、今年は結構雪が降っています。

前回に引き続き、今回もオホーツクハウスの近くで暮らしている方に文章を書いていただきました。斜里町にお住まいのAirda(エアダ)さんです。ビジターセンターで働きながら、音楽をつくったり置物をつくったりしているものづくりお兄さんです。

東京で生まれて37年暮らし、昨年3月に斜里町に引っ越してきたAirdaさん。「北海道にあこがれて移住しました!」とか、「こういうことをやりたいという思いがあって!」というわけではない、けど知床で楽しく暮らしているAirdaさん。その暮らしのリアルを様々な風景の写真とともに紹介していただきつつ、「引っ越し」の感覚について書いていただきました。

***

はじめまして。Airdaです。

Airdaでググると「もしかしてAirdo」と表示されますが航空会社ではありません。人間だよ。

昨年4月に東京から斜里に引っ越してきて、アンビエント的なBGMや想像の建築物の置物を作りながら、ウトロのとあるビジターセンターで働いている「エアダ」です。

こうして文字にしてみると怪しさ100%の人物ですが、何者なのか簡単に説明しながら、知床斜里での生活や感じたことをご紹介したいと思います。

知床斜里については前回シリエトクノート中山さんが詳しく書いているので、そちらをご覧ください。

1 おまえは何者なのか?

おまえは東京生まれ東京育ち。高校(定時制)卒業後からバンド活動を始め、休止をはさみながら33歳まで続けていました。

「バンドで食う」というスタンスではなく、働きながらバンド活動して自分達でCD作ったり、友達のレーベルからリリースしたりして活動していました。今や珍しくもなんともないスタイルです。

ベースとして在籍していたバンドを脱退してからも、個人で音楽を作ったり、想像の建築物の置物を作ったりしつつ、フリーターや会社員として東京で37年過ごしました。

在籍していたバンドはstarvingmanという名前で今も活動中。先日7インチをリリースしたばかりです。

2 なぜ知床へ?

理由は非常に単純です。東京で知り合って結婚した妻の出身地が、斜里の隣町の清里町だから。

オホーツクハウスきよさともあるとても良い町

妻は付き合った当初から「いずれは帰りたい」と言っていたので、僕の方もなんとなく覚悟はできていました。だから本気で「帰りたい」と相談された時も「OK!」と特に悩むことなく決めました。

「そんな簡単でいいの?」と思う人もいるかもしれませんが、個人的には良いと思います。これは最後にまた書きます。

妻は斜里の企業の面接を受け、2020年11月に採用が決まりました。

地元から全く友達がいない所へ行くのに抵抗を感じる人が、どの位いるか分からないけど、帰りたいという妻に「駄目だ。東京に残る」とは言えなかった。勿論理由はそれだけではなく、結婚してから何度か妻と一緒に帰省していたので、清里や斜里のなんとなくの町の雰囲気や、景色の素晴らしさは知っていたから迷いはありませんでした。

そして、自分が斜里に住めば友達が来てくれる。これを想像した時の楽しさ。実際去年9月に友達が遊びに来てくれたけどとても楽しかった。

それから仕事の引継ぎ、引越しの準備、イベントの企画、佐賀への聖地巡礼(某アニメ作品)、自分の仕事探し、面接の為に知床へ行く等、東京での生活を懐かしむ暇もなく時間が過ぎ、2021年3月27日、僕は北海道へ飛び立ちました。

振り返ってみると慌ただしい……。

3 知床での生活

前置きが長くなりましたが、これが僕が斜里に来た経緯になります。単純な理由でしょ?

ここからは肝心の斜里での生活をご紹介したいと思います。これからどこか遠くに引っ越そうと考えている人の参考になれば幸いです。

先ずは家探しです。各自治体には移住を推進する課だったり行政の窓口があります。

僕達は妻の知り合いから、公営の団地が空いていることを聞いたので、そこに応募。無事抽選に受かりました。

2LDKで60㎡位あり、めちゃくちゃ広いです。家賃は阿佐ヶ谷で40㎡のマンションに住んでいた時の約3分の1なので、衝撃的な安さと広さです。

団地は平屋タイプのもあり、外見も綺麗でちょっとした家庭菜園のスペースもあるので、先ずは団地に住むというのも1つの手だと思います。

抵抗が無ければ地元の不動産屋さんにいきなり行くのもありかも。

というわけで団地に暮らし始めた僕達。

これだけで引っ越してきて良かったと思える景色です。

斜里は海沿いの町でもあるので、誰もいない海岸に車があれば数分で行けるし、近ければ徒歩でも行けます。ここでチェアリングすると最高。渡りの時期にはシギもいます(鳥好き)。

2枚とも同じ場所。流氷が来ると別世界……。

魚も美味しい。春はニシンが数十円で買える上に、新鮮なので刺身で食べれちゃう。美味し過ぎる。

僕の場合、ウトロの漁師に知り合いがいるので、ちょくちょく信じられない位の量のお裾分けをもらったりします。他の知り合いからも野菜だったり、魚をもらったりすることもあり、北海道の豊かさや人の優しさを肌で感じることが多いです。

そして平貝という初めて見る貝も食べた。これもめちゃくちゃ美味い。逆になっているのは気にしないでね。

(魚については次回書こうかと思います)

東京では全く気軽に見ることができなかったノビタキも沢山います。スズメより見る。

同じ斜里町のウトロに行けば知床連山も気軽に見れます。標高3,000m位ありそうですが、一番高い羅臼岳で1,661mしかありません。しかし高緯度に位置する為、本州の3,000m級の山と同じ条件。登山する時は装備をしっかりと。

港で網を吊り上げているクレーンをよく見かけます。これは工事ではなく、網の修復をする為に吊り上げているのです。「あれは何?」と観光客の人によく聞かれます。

斜里からウトロに通う道では大小の漁船を毎日見かけます。僕はこの景色が好きです。

佐々木種畜牧場の豚肉「麦王」。めちゃくちゃ美味い。しゃぶしゃぶがおすすめ。直売所でもスーパーでも買えちゃう。

カラフトマスの遡上。ウトロにあるペレケ川で撮影。ウトロにいかなくても斜里市街地の用水路でも見れる…。恐るべし知床。

夏はあっという間(暑い日は2週間位しか続かない)に終わり直ぐに秋が。

10月下旬頃。編隊を組んで空を飛ぶオオハクチョウ。渡りの時期。

11月下旬頃になるとオオワシもやってくる。市街地の川沿いの電柱にいてビビる。絶滅危惧種とは思えない身近さ。

12月になると雪も降り始め気温もググっと下がり、氷点下15℃以下になることもしょっちゅう。そして早ければ1月下旬には流氷が……。

駆け足で斜里での1年間を写真付きでご紹介しました。

他にも沢山あるんですが、それはまた違う機会に。

4 結局どうなの知床での生活?

快適です。不便さに不満を感じるかと思ったけど、そんなこともなく楽しく暮らしています。

それだけでは伝わらないので、仕事、買い物、暮らし、人間関係等のことについて僕個人の感想を書きます。

①仕事は?

仕事はあります。セイコーマート、セブンイレブン、ツルハドラッグといったチェーン店や、地元企業の仕事も。例えば農業機械の製造・販売を行っているサンエイ工業(商品広告の求人が出ている)や、伴ビジネスという事務用品の卸、販売や水産加工会社があります。

同時期に札幌から引っ越してきた下山夫妻は、旦那さんは絵本作家を目指しながらフリーのイラストレーター、奥さんはキッチンカーでおにぎり屋を営む為に準備を進めつつ、斜里で知り合った人の紹介で農家の収穫等のアルバイトをしています。

つまり仕事はなんとでもなるってことです。

②買い物は?

国道沿いにはラルズマート、Aコープ、ツルハドラッグ、サツドラ、ホーマックといったチェーン店もある他、サカモトホーマ(北見が本店)やビッグマートみたに、アンドウ洋品店といった地元のお店もあります。知床ごんた村という農業、ピザ屋を営むお店には野菜の直売所もあり、新鮮な野菜を安く買えます。

斜里にずっとある神田書店や五十嵐金物店もあります。美味しい料理、日用品、オーガニック系の食品、お菓子、食品等を取り扱うウミネコマーケットや、HIPHOP中心にレコードを扱うJUICErecordsがあったりとバラエティ豊かです。

③暮らしは?

1.車

車は必須です。無いと暮らせません。無理ゲーです。2人暮らしの場合1人1台無いともしかしたらストレスになるかも。

それに伴い車の出費は増えます。税金。夏タイヤ、冬タイヤの購入、ガソリン代等々。これは斜里に限らず車社会では逃れることのできない出費なので諦めましょう。

会社によってはガソリン代が出ます。僕の場合は2万2000円交通費として支給されていますが、足が出ています……。

2.灯油代

光熱費は東京に住んでいた時とほぼ変わらないです。住む場所が新築のアパートであればオール電化かもしれませんが、大体ストーブだと思っていた方がいいです。

灯油代は月1~2万円位で、これもガソリン同様手当で出る所もあります。

寒さが半端ないので、灯油代に関しては仕方がないものと割り切った方がいいでしょう。

寒さ半端ないけどストーブ点けると暖かいので、室内では半袖のこともしょっちゅう。アイスも食べちゃう。

3.防寒

冬はスノーブーツといった暖かい靴やダウンジャケットが必須。全く無い場合は買い揃える必要があるかもしれません。今はメルカリやヤフオクで安く揃えることもできますし、ホームセンターでは割と安く防寒具を購入できます。

安い物を買うと1シーズンで駄目になったりするので、できるだけ頑丈で良い物を最初の内に買うことをオススメしますが、今あるものでなんとかなるならそれが一番良いと思います。

4.除雪

東京にいた時は雪が降ったら喜び庭を駆け回っていたけど、今は「明日雪かき大変だな」とややテンションが下がる。

いつもより早く起きて、団地の入口や倉庫の前を雪かきして、その後スノーブラシで車の雪をおろします。出勤後も職場の雪かき……といった具合に、雪かきと車の雪下ろしからは逃れられない宿命ですが、車で通勤しているとめちゃくちゃ運動不足になるので、逆に雪かきが良い運動になってます。そして雪かきは無になれるので、テンションが下がりつつもなんだかんだ好きです(ややこしい)。

④人間関係は?

田舎=人間関係が大変という印象があると思います。僕もそうでした。実際1年半暮らしてみた正直な感想としては、自分が何をするかによって人間関係は変わります。身も蓋も無い!

蛇足ですが、僕は元々バンドマンであり、個人でも音楽活動をしていたり、オーブン陶土で置物を作っていたりと、表現する場が欲しいタイプの人間です。

しかし都会と比べるとライブハウス、クラブ、ギャラリー等の数が少なく、声がかかることもありません。そうなると自然に自分でやろうという考えが頭をよぎり、これはやるしかない、と2021年7月にシリエトクノートの中山さんと「本と音」というイベントを開催しました。

来年の1月にもイベントを主催します。

5 not移住

こんな風に書くと「移住=地域で何かをしなくちゃいけないの?」と誤解を招きそうだけど、そんなことはありません。

移住に関する本や記事に登場する人達は、「何かしらのスキルがある」「既に手に職がある」「大きな目標がある」に大体分かれるかなと思っていて、移住に対するハードルは高い印象があります。実際に色々な人に会うと、凄い経歴、スキル、熱い気持ち、目標等々、感じた印象は間違っていなかったです。じゃあそういう何かが無ければ駄目なのか?

僕はそう思いません。

景色が綺麗だから。ご飯が美味しいから。なんとなく合いそうだから。

そういった日常的な感覚を優先して、移住ではなく「引っ越し」する位の気軽な感覚で、北海道に来ても良いと思います。冷静に考えて何の問題があるのか。知らずの知らずの内に固定概念ができて、それが足枷になっている様な気がします。

地域にコミットする。まちづくり。そういったものは一旦頭の片隅に置いて、先ずは暮らしてみる。

そこから色々なことが始まり、やがて何かになる。

都会から離れて暮らしてみて、駄目だったらまた帰ってきたらいいし、またどこかへ行けばいいと僕は思います。

そういう風に考えると、あちこちの場所が急に近く感じるようになりませんか?どうでしょうか?

長文にお付き合いいただきありがとうございました。それではまた!

***

Airdaさん、ありがとうございました!

地域に引っ越すことを「移住」と言ってしまうことが多いですが、「移住」する人はなにか大きな目的があるんだろうな、地域に住むことはハードルが高いな、と感じてしまう理由にもなってしまっているかもしれません。そういうことより、もっと軽やかに、自分の生活に合わせて住む場所を変えたり、自分がたまたまやりたいことが重なったからある場所に住んだり、ということでもいいのかもしれません。

いずれにしろ、地元出身で地元に帰ってきて楽しく暮らしている中山さんのような方や、地元と全然違うところで暮らしていたけどたまたま引っ越してきて暮らしているAirdaさんのような方、そして観光やお仕事でいらっしゃる方のように、いろんな方が出たり入ったりする地域であることはとても豊かなことなのではないかと思います。

そんな感じで、もしご興味があれば、そしてご都合が許せば、気軽にオホーツクに滞在してみたり、しばらく住んでみたりしても楽しいかもしれません。きっと地元を愛する中山さんや、生活を楽しむAirdaさんと出会って、この地域での暮らしに馴染んで楽しめるかもしれません。

オホーツクハウスからお知らせ

引き続き、オホーツクハウスではどうみん割を適用中です!北海道内にお住まいの方は宿泊料金が基本的に半額になるのに加えて、おひとり1泊あたり2,000円分のクーポンをおつけいたします。

どうみん割ウェブページより

どうみん割ウェブページより

また、今回もニュースレター限定割引を実施します!このニュースレターを読んでくださっている方限定で、1/17(月)〜2/10(木)で来てくださる方は、割引適用でおひとり1泊あたり2,000円(税込)でご案内します!(※どうみん割が適用できないかた限定です)

どうみん割は最大5泊6日までなので、引き続きそこそこ長期間で来てくださるの大歓迎です!しゃり・きよさと・さっつるいずれも8〜10人泊まれるので、大人数でも大歓迎です!

お気軽にこのメールに返信か、こちらのお問い合わせフォームからお問い合わせください。お問い合わせフォームからの場合は「ニュースレターみました!」とお伝えください。

2月後半からは流氷シーズン!昨今のご時世もありなかなか状況が見えないですが、予約もぽつぽつ入りはじめていますので、もしご興味がございましたらお早めにご連絡ください。特に土日にいらっしゃる方はお早めにどうぞ!

毎年流氷でいっぱいになるウトロ地域、流氷ウォークのときに撮った写真です

毎年流氷でいっぱいになるウトロ地域、流氷ウォークのときに撮った写真です

この季節までもうすぐ〜!次回もまた別のかたに文章を書いていただく予定です。どうぞお楽しみに!

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