2022年6月号:むらかみさんと知床をつなぐ「クマ活」
みなさんこんにちは!オホーツクハウスを運営する、株式会社トーチのさのです。
季節は短い夏へ
オホーツクの春がすぎ、気温もときおり暑い日が出てくるようになりました。
オホーツクハウスさっつるのじゃがいも畑もすくすく育っています
この時期のオホーツクは、各地で畑の作物が育っている様子をみることができます。麦やたまねぎ、じゃがいもやビートなど……オホーツクハウス周辺にはじゃがいもの畑が多く、6月〜7月にかけて花が咲きます。これが結構きれいなんです。
2019年に清里町で撮影
こんな様子をみながらワーケーションもなかなかおすすめです!
さて、今回は前回のAirdaさんからのリレーで、ウトロのホテルで働くむらかみさんの2回めの記事です!今回はむらかみさんが惹かれ続けている知床のクマと、その魅力、地域や観光でいらっしゃる方々との関わりについて書いていただきました。
皆さんお久しぶりです!初めての方はこんにちわ!
知床ウトロにいるむらかみです。
6月になってもダウンジャケットを手放せなかった日々はやっと終わり、今、窓の外に見える森では新緑がキラキラ輝き、エゾハルゼミが鳴いています。6月は新しい命が生まれるシーズンでもあり、エゾシカやキタキツネをはじめとする動物たちも、出会いと別れを身近に感じながら生きています。
前回、すさまじい知床へのラブを語りましたが、今回はご期待に答える形でヒグマへのラブを語りたいと思います。
私は今、ホテルの広報を担当しながら、草刈りやゴミ拾いをしています。
これは「クマ活」という「ヒグマとの共存を目指した活動」なのです。
酪農学園大学に入学した私は自然環境や野生動物を学び、その中でもヒグマのことを専門に調査する研究室に所属し、山を歩きヒグマのフンを探す日々を過ごしていました。
地元の大阪から出てきて、はじめは大学の通学路に牛舎やトウモロコシ畑があること、冬になると雪が降ることすら新鮮に映りました。生活をする中で、やっと北海道の自然を身近に感じることができた大学2年生。それでも、あの大きな動物が、私たちの住んでいるこの大地にいることがとても信じられませんでした。ヒグマのことをよく知らないままで入った研究室の調査では、彼らと同じ空間で息を吸って吐きながら歩き、その存在をすぐそこに感じるのです。
ぬかるみにつけられた大きな足跡や人の背丈を超える場所につけられた爪あと、転々と落ちているフン、センサーカメラに人知れず映る姿…こんなにも彼らの存在を色濃くビシビシバリバリと感じるのに、結局、大学4年間はヒグマの姿を見ずに終わりました。
林道に残るクマの足跡。ここを歩いたことだけが刻まれている。
トドマツに残るクマの爪あと。なぜひっかいたのか想像しながら、その奥にいるヒグマを考える。
ヒグマは森の中で一人ぼっちで、なわばりを持たずに暮らしています。人を避ける臆病な個体が多かったり、そのパワー故、接近すると人の命が危なかったりすることから、他の動物に比べて調査が難しく、まだまだ謎多き動物なのです。
私は大学4年生の時に、ヒグマがお互いにどのようにコミュニケーションを取っているのかについて調査をしていましたが、自分が納得のいく答えは出せないまま、ぼんやりと終わってしまいました。(正直なところ、部活に明け暮れていたのが一番の原因です。笑)
姿は見えないけれど、この森はちゃんと彼らのことを支え育んでいる、大学4年間でその事実を知りました。ヒグマの生態はぼんやりとしかわからないけど、だからこそ、私は今もなお、自然豊かな北海道の森に心が惹かれ、そこに住む彼らを感じ、必死にクマグッズを集める生活をしているのだと思います。
この執筆の休憩がてら集めた部屋のクマグッズ。自分で集めるだけでなく、もらい物も増えました。
クマグッズは置いといて…。(気が付いたら真面目になりすぎるので一旦リセット)
そんなヒグマバカな私が、ひょんなことから「日本で最もヒグマの密度の濃い場所」である知床に移り住んだわけです。はじめはホテルでの接客を楽しみながら知床の自然豊かさを満喫する生活でしたが、観光業と自然・ヒグマが近しいこの地では、否応なしに私の知識は活かせることになります。私も目立ちたがりなので、前に立って話すことに喜びを感じ、スタッフトークの担当をしてみたり、ガイドの勉強をしてみたり。お手製のトランクキットでクマのフンの中身をみんなに見てもらった翌日、職場の上司のお子さんから「ヒグマのフンのお姉さん」と呼ばれるぐらいには、クマクマしいやつでした。
社会人になってもクマ調査に同行し、クマのフンを見つけて満面の笑みを浮かべるむらかみ
大学の時は魅力的な動物であると信じ、ひたすらキラキラした目でヒグマを見つめていましたが、社会に出て気づかされたことは、みんなヒグマのことをそんなに好きじゃないし、興味がないし、中には害獣などネガティブな印象を強く持っている方がいるということです。
既にご存知かもしれませんが、知床では年々ヒグマと人との間の軋轢が深刻化しています。ヒグマが多くいる知床では、ヒグマの姿を見たいがために来るビジターもいます。それはそれで、地域にとっては経済効果のあることなので、いいことなのかもしれません。ですが、過剰に近づいてしまったり、餌をあげてしまったり、その結果、人に慣れてしまったヒグマを駆除せざるをえなかったり。
特に地域住民からすれば、近くに人がいることに慣れ、街に近づくことを厭わないヒグマは生活を脅かす存在です。他にも、愛情を込めて作った農作物を食べてしまったり、漁で使う網を壊してしまったりするヒグマは、農家さんや漁師さんにとって厄介者なのかもしれません。知床では、というか一般的には、ヒグマは少しネガティブな生き物なのかもしれません。
キラキラ輝いていたものに、ぽつぽつと黒が広がっていくような。好きなものを好きって言えない、そんな空気感を感じていたことを覚えています。
クマのフンを見つけたらにおいをかぎ、内容物について観察しましょう。クマバカになる第一歩です。
そんな中、とってもたまたま、ホテルで取り組む「ヒグマとの共存を目指す クマ活」を担当することとなりました。別で友人と始めた「知床ゴミ拾いプロジェクト(ゴミプロ)」とも併せて、この3年間で精力的にヒグマとの共存を目指しまくっています。
この二つのオモテ面については、色々まとめているのでぜひそちらを参照いただければ!
■クマ活 草刈り
■クマ活 ゴミ拾い
■知床ゴミ拾いプロジェクト
これらの活動のウラ面は、「好きなものを好きっていう人の繋がり」「大きな問題に立ち向かう人の繋がり」を作ることです。
クマ活の主な活動は「草刈り」、ゴミプロは「ゴミ拾い」です。目標は、ヒグマの命や私たちの暮らしを守ることとはいえ、そんなこと一人でもくもくとしたらよくて、それで自己満足すればいい話かもしれません。
クマ活やゴミプロでは、SNSなどでうまいこと発信し、その物事に興味のある方が集い、実際に活動に参加し、手を取り合ってお互いをたたえあえる、そんな環境を作っています。
生憎、私は一人で頑張れるほどハートが強いわけではないのです。ただ、漠然と広がる黒い何かに、のまれるわけにもいかないわけです。好きなもの好きって言いたいし、ヒグマがネガティブな存在になることにも声を上げたいし、その先に、世界を救う一滴があればと思っています。
最後の写真は、オホーツクハウス管理人・佐野くんが参加したゴミプロ!
きっと、この原動力は、やっぱり私がヒグマバカで知床バカであることだと思います。
ここ最近、たくさんの方にクマ活について興味を持ってもらいました。その中で、「あなたにとってヒグマとは」と聞かれて、改めて考えたのですが、「ワクワクさせてくれる存在」と答えました。
まだ知られていないヒグマという動物に一歩ずつ近づくことにワクワクして、北海道の豊かな自然に気づかされる。そこから他の動物との関わりや、文化のこと、生活のこと、行ったこともない外国のこと、いろんなことに興味を持つ。知れば知るほど、また新しいヒグマの姿を見つけます。クマ活やゴミプロを続けていれば、きっと、いろんな人に出会えるのでしょう。
だから、ヒグマを好きなことはやめられないのです。
むらかみさんのクマ愛が伝わってきますね!自分の好きなものに正面から取り組んでいるのはとっても素敵です。
ぼくもクマ活の一環のゴミ拾いプロジェクトに参加しました!市街地から割と近いのに、ヒグマのフンやヒグマが食べたと思われる形跡があり、本当にクマと密接に関わる暮らしなんだな……ということを体験しました。
ゴミ拾いプロジェクトは実施されている日であれば誰でも参加できますので、参加したい、という方やご興味のある方は、活動が公開されているfacebookグループなどをご覧ください!
オホーツクハウスからのお知らせ
夏も近づいてきまして、ありがたいことにお盆付近の予約も多くいただくようになってきました。また海外からのお客さんも、もう少し先の予約ですが少しずつ戻ってきつつあります。
どうみん割は7月15日まで延長になりました。その後も延長になるかはまだわかりません。7月後半〜8月前半の宿泊や、お盆以降の宿泊、その周辺の期間の長期滞在はまだまだ受付中ですので、お気軽にお問い合わせください!
来月は3月にも書いていただいた、斜里在住のおいしいもの好き、ゆきのさんに書いていただきます。お店をやりたいと言っていたゆきのさん、一体なんのお店を?どんなかたちで?始めたのか!そんなことを書いていただけると予想しています。お楽しみに!
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